【お客さまの心を動かす】〈攻める力〉

攻める力

お客さまの心を動かす力~ホスピタリティ~

飲食店経営をスポーツの試合に例えると、攻める力は攻撃力です。

スポーツの醍醐味の1つが得点が入る瞬間です。

たくさん得点が入る試合は盛り上がりますし、たくさん得点を取るチームは人気があります。

つまり、攻撃力=魅力と言い換えることが出来ます。

飲食店も同様で、守る力が強く安心・安全に店舗運営をしているだけではファンはつきません。

どんな仕事でもファンがいなくては成り立たちません。

ファンを獲得していくためにも、攻撃力(心を動かす力)を身に付けていきましょう!

サービスとホスピタリティの違いを理解する

お客さまの心を動かすうえで大切になってくるのが「サービス」「ホスピタリティ」の違いを理解しているかです。

「サービス」「ホスピタリティ」の決定的な違いは、「誰を基準に、どのような価値を提供しているか」にあります 。

一言で表すと、サービスは「仕組み(マニュアル)」であり、ホスピタリティは「思いやり(心)」です。

それぞれの定義と具体的な違いを分かりやすく解説します。

1. サービスとホスピタリティの定義

サービス(Service)とは?

  • 意味:マニュアルに基づき、「誰に対しても平等に、正確に」提供される実務や仕組みのこと 。
  • 基準:お店側(主語は「お店」)
  • 目的:不満を無くし、効率的に店舗を運営すること。
  • 例:注文を正確に取る、料理を10分以内に運ぶ、お会計をミスなく行う等。

ホスピタリティ(Hospitality)とは?

  • 意味:目の前のお客様の状況を察し、「その人のためだけに、主体的・個別的に」行うおもてなし。
  • 基準:お客さま(主語は「目の前のお客様」)
  • 目的:感動を生み、お店のファン(リピーター)になってもらうこと。
  • 例:寒そうにしているお客様に温かいお茶を出す、妊婦の方にクッションを勧める等。

3. 具体的なシーンでの違い(例)

〈シーン①〉お客さまが「箸」を落としたとき

サービス:お客様に呼ばれてから、新しい箸を素早く持っていく。

ホスピタリティ:落とした「音」に気づき、呼ばれる前に新しい箸を持ってテーブルへ向かう。

〈シーン②〉誕生日のお祝い

サービス:予約通りにデザートプレートをタイミングよく提供する。

ホスピタリティ:お祝いの会話を小耳に挟み、予約になくても「おめでとうございます」とメッセージを添えた一皿を即興で出す。

〈シーン③〉雨が降ってきたとき

サービス:傘立てを店内に移動させる。

ホスピタリティ:お帰りの際のお客様に「お足元お気をつけて」と声をかけ、濡れた上着を拭くためのタオルをそっと渡す。

4. マネジメントにおける優先順位

飲食店を経営・運営する上で、サービスとホスピタリティを運用していくうえで重要なのは「どちらが大切か」ではなく「順番」です。

【土台】サービス(マニュアルの徹底・効率化)

    ⬇ これが完璧にできて初めて

【応用】ホスピタリティ(個別のおもてなし)が輝く

料理の提供が遅い、レジが間違っているなど、「サービス」の土台が崩れている状態で「ホスピタリティ」だけをやろうとしても、お客様さまは満足しません。

これまでに議論してきた「人手不足の解消」「業務の仕組み化」は、まさにこの「サービス」の土台を固める作業です。

土台が安定してスタッフの心に余裕が生まれて初めて、現場で最高の「ホスピタリティ」が発揮されます。

マニュアル通りのサービス(基礎) 

「マニュアル通りのサービス(基礎)」の徹底に課題がある場合、原因はスタッフのやる気ではなく、「マニュアル自体が使いものになっていない」「定着させる仕組みがない」のどちらかです。

基礎サービス(挨拶、提供スピード、レジ、清掃など)を「誰がやっても100点」にするための、具体的な仕組み化の手順を解説します。

1. 基礎ができない3つの原因と解決策

スタッフがマニュアル通りに動けない理由は、以下の3つに集約されます。

原因①:マニュアルが文字だらけで読まれていない

解決策:動画・写真ベースへ刷新する

文字だけのファイルは誰も読みません。「ハンディの操作手順」「開閉店作業」「盛り付けの見本」は、スマホで15秒の動画を撮るか、写真に矢印を入れただけの「1枚マニュアル」にします。

原因②:合格の「基準」が曖昧である

解決策:「数値」と「状態」で定義する

×「元気に挨拶する」 ➡ ◯「お客様と目が合ったら、2秒以内に笑顔で『いらっしゃいませ』と言う」

×「きれいに掃除する」 ➡ ◯「テーブルを拭いた後、手で触ってベタつきがゼロの状態にする」

原因③:教える人によって言うことが違う

解決策:教える側のマニュアル(トレーニングプラン)を作る

「初日はこの動画を10分見せて、この5項目だけを体験させる」という、教える側の共通スケジュールを作ります。

2. 基礎を定着させる「チェックシート」

スタッフに「やれ」と言うだけでは定着しません。ゲームのようにレベルアップが見える仕組みを導入します。

すべての業務を細かく分解し、以下のようなシートを事務所に貼り出します。

項目(例)

①お出迎え

具体的行動:3秒以内に笑顔で挨拶、席へのご案内ができる

②ドリンク作成

具体的行動:レシピ通りに30秒以内で作れる(3種以上)

③片付け

具体的行動:退店後2分以内に、テーブルを次の状態にできる

習得基準:

本人確認:

先輩確認:

店長確認:

ポイント:項目ごとに「店長のハンコ」がもらえたら、できる業務が増えた証拠として認められます。これが前述の「評価の見える化(時給アップの基準)」と連動していると、スタッフは自発的にマニュアルを覚えるようになります。

3. 店長が「言わなくても回る」ための日常の仕組み

店長が毎回「マニュアル通りにやって!」と怒鳴るのはエネルギーの無駄です。

環境に「言わせる」工夫をします。

「ポジション別・直前チェックリスト」の設置

レジやキッチンの目の前に、「出勤したらまずやる3つのこと」「営業中に毎時0分に確認すること」をラミネートして貼っておきます。

行動する瞬間に目に入る環境を作ります。

「朝礼・夕礼」のルーティン化(3分間)

シフトに入る直前に、「今日のQSC強化テーマ:『お皿の向きを揃えて提供する』です。お願いします!」と、ワンテーマだけ全員に意識付けします

「主体的なホスピタリティ(応用)」

「主体的なホスピタリティ(応用)」を育てるには、マニュアルで縛るのではなく、「スタッフが自分で気づき、自分で考えて動いてよい範囲(裁量)」を店長が与えることが不可欠です。

ホスピタリティは「心」の持ちようと思われがちですが、マネジメントの仕組みによって組織的に生み出すことができます。スタッフが自発的におもてなしを始める3つのアプローチを解説します。

1. ホスピタリティを爆発させる「3つの仕組み」

a.「1回2,000円まで」の即決権限を渡す(ポケットマネー制度)

スタッフが「目の前のお客様を喜ばせたい」と思っても、店長に確認している間にタイミングを逃します。

仕組み:1シフトにつき上限2,000円(または原価数百円のデザートなど)まで、スタッフの判断でサービスしてよいルールにします。

具体例:「今日が結婚記念日なんです」と話すお客様に、スタッフの判断でメニューにないミニデザートを「おめでとうございます!」と出す。

b. 「良かったことを共有」を習慣にする

ホスピタリティの種は「気づく力」です。

人の良い行動を見つける感度を全員で高めます。

仕組み:日報やグループチャットで、「今日、〇〇さんがお客様の荷物にサッとカバーをかけていて素敵でした!」という他者推薦の褒め言葉を飛び交わせます。

効果:褒められたスタッフは嬉しくなり、周りのスタッフも「自分もやってみよう」と真似を始めます。

c. 店長が「なぜそれをしたか」の意図を語る

背中を見せるだけでなく、店長自身のホスピタリティの「脳内」を言語化して伝えます。

行動:店長が自らおもてなしをした際、スタッフに理由を説明します。

具体例:「さっきのお客さん、何度も時計を見ていたから、新幹線の時間が近いかもと思って『お急ぎですか?』って声をかけて、料理を最優先で仕上げたんだよ」

2. ホスピタリティが生まれる「気づきの問いかけ」

店長が「もっとホスピタリティを発揮して」と抽象的に言ってもスタッフは動きません。

アイドルタイム(暇な時間)などに、以下のような「具体的な問いかけ」をして、スタッフの想像力を刺激します。

「もし自分が『赤ちゃん連れのお母さん』だったら、この席に座ったとき何が不安かな?」
(ベビーカーの置き場所、離乳食の温め、周囲への気遣いなどへの気づき)

「常連の〇〇さんが、いつもと違って『スーツ姿で疲れた顔』で来たら、どんな風に声をかける?」
(「今日もお仕事お疲れさまです!」の一言や、疲れたときにオススメの商品などを一緒に考えてみる)

3. 【重要】ホスピタリティを求める前の「大前提」

ここで、これまでお話ししてきたすべての課題が一本の線でつながります。

スタッフにホスピタリティを求めるなら、店長は以下の状態を絶対に作らなければなりません。

【店長が「休む力」を発揮し、心とスケジュールに余裕を持つ】

    ⬇

【「マニュアル通りのサービス(基礎)」を仕組み化し、現場のバタバタを無くす】

    ⬇ 

【スタッフの心と時間に「余裕(余白)」が生まれる】

    ⬇

【初めて、目の前のお客様を観察し、思いやる「ホスピタリティ」が発揮される】

スタッフ自身が「忙しすぎて死にそう」「店長がいつもピリピリしていて怖い」という環境では、絶対にホスピタリティは生まれません。

最高のホスピタリティは、店長が作った「心の余裕」という土壌からしか育たないのです。

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